| [その五] |
| 秘すれば花の味わい。 食は人の天なりといいます。夏の陽が傾き始めたら、キリリと冷やしたお酒かビールに『昆布じめ刺し身』を ご用意ください。盛りつけは、自分で行うのが肝要です。作家の立原正秋氏は食の喜びを『秘すれば花』に書いています。 包丁を握ってみようと考えたのは、うまいもんを食べたい一心からであった。 とはいえ、殊更に難解な秘密はない。創意と工夫だけがうまいものをつくる奥義というべきか。 包丁の冴えというのは、材料にあまりてを加えずに味を生かすことである。 彼が『昆布じめ刺し身』のおいしさを知っていたら、何と書き記したでしょうか。 はるか三百年ほど前。北前船が日本海の荒波を乗り越え、北海道から富山へ昆布を運んできました。 富山湾は天然のいけすと呼ばれ、新鮮な魚が豊富に獲れます。魚と昆布との出会いは当然のことでした。 魚を刺し身におろし、広げた昆布に並べてぐるぐると巻くだけ。刺し身が昆布の旨味に熟成します。簡単なようで、実は創意と工夫を凝らした調理法です。 この越中人の知恵を元に、『櫓旬』『華鱗』『漁音』では、それぞれ現代懐石風味にお造りしました。その味をどうお伝えしたらお分かりでしょうか。やはりご賞味していただくしかないようです。 この夏も幸福でありますように。粋なあなた様へ『秘すれば花』の味わいをお届けします。 そして、親愛なる方へ、お世話になった方へ、本物の味をお贈りください。 |
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